ややネタバレではありますが、このマンガのテーマを象徴するような田中さんのセリフがありますのでご紹介します。
「踊れなかったら私なんてただのおばさんよ…!」
(四十肩になり、ダンス禁止、絶対安静になってしまったときのセリフ)
田中さんは四十肩になり踊れなくなってしまったことで、これまで地道に積み上げてきた「ベリーダンサーの自分」というアイデンティティをすっかり失ってしまいます。
アイデンティティを失うことは自分の軸がなくなるようなものなので、そりゃネガティブにもなりますよね!
歳は取るのに何者にもなれない自分
私たちはいつも何者かになろうとします。
それは世間に自分という存在の価値を認めてもらいたいから。
しかし年齢を重ねるにつれて多くの人は「何者にもなれなかった自分」に気づいてしまいます。
年齢を重ねれば何者かになれると、当たり前のように思っていたのに…
たとえば子供がいれば「子供の母親」というアイデンティティによって自分の存在価値を感じられることは多いものです。
しかし田中さんのように独身で、優秀ではあるけれど特別な仕事をしているわけでもない場合にはなおさら、「何者でもない自分」と向き合わざるを得なくなるのがアラフォーの現実です。
(ちなみに、お母さんたちも子育ての手が離れるとまた「で、私自身はけっきょく何者なの?なにがしたかったんだっけ?」という想いが湧き上がってきたりするようです)
きっとアラフォーってそんなタイミングなんですよね。
すがっていたひとつを失ってしまうと一気にネガティブに落ち込んでいく脆い感じもまたこの年代のリアル。
だとすれば、「何者かである」という自分らしいアイデンティティをいくつか持っていることが、歳をとることへの不安に打ち勝つ自信になりそうです。
3つのアイデンティティを持つ
個人的には、3種類のアイデンティティ=「顔」を持っていることが、精神衛生上いいかなぁと思います。
たとえば私たちは少なくとも「誰かの子供」です。結婚していれば「誰かの妻」だし、子供がいたら「誰かの母」だし、ペットがいれば「ペットの飼い主」ですよね。これは家族的なアイデンティティです。
また、今の時代は職業人としてのアイデンティティも重要です。
「社会の中でどう役に立っているか?」という感覚は、自己有用感を高めてくれます。
「誰かに褒められる」仕事内容というよりは「誰かに感謝される」ことの多い職場のほうがより充実感を得られそうです。
さらにもうひとつ、家族や仕事とは関係のない、「個人としてのアイデンティティや繋がり」があると、人生の幸福度が上がります。いわゆる「ゆるい仲間」とか「趣味」の領域です。
私が提供したい価値はまさにその部分ですが、「生きるのに必須ではないけれど、幸せに生きるためには最重要」なものだと考えています。
(あと単純に、自分らしさを表現できる人、幸せそうに生きている人って魅力的ですよね!)
個人としてのアイデンティティを持つためには、「自己表現できること」「自己表現が受け入れられる場所であること」が重要です。
仲良しグループで集まるのもいいのですが、もしそこで「自分らしさをだしたら嫌われちゃうかも…みんなに合わせておこう」などと感じるのなら、それは「個人としてのアイデンティティ」を発揮できる場所ではなさそうですよね。
こんな感じで3種類のアイデンティティ=「顔」を持っていれば、たとえひとつが崩れたときにもほかの2つが自分自身を支えてくれるでしょう。
また、「家族だけ」「仕事だけ」で生きているときよりも、それぞれの場面で支え合える人が増えます。
田中さんも「ベリーダンサー」としてのアイデンティティが崩れそうになったとき、ベリーダンス繋がりの趣味仲間(?)たちが親身になって助けてくれていましたよね★
そして何よりも、長く続けられる趣味は、あなた自身を支えてくれる良き友になります。
もしいま「個人としてのアイデンティティがない」と感じる人は、以前からやりたかったことを勇気を出して始めてみましょう。
自分から心を開き、動かない限り、自己表現できる場所なんてなかなか見つからないものですから…!